メフィスト編集長 (Méphisto)の編集日記
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ボクたち兄弟が小さかったころに撮った写真です。 右がボク、メフィスト。敵が来ないか?・・・ と下を覗きこんでいるのがアテナ。後ろに隠れているのはフィラエです。ボク以外は女の子。 いちばん弱虫だったフィラエは、彼女と同じ名前がついた神殿を見るためにエジプトに旅立ってしまったらしくて、まだ帰って来ません。 それで、ボクは元気なアテナとふたり兄弟で暮らしています。 アネゴのアテナ |
アテナは、赤ん坊のときから怖いもの知らずでした。 すでにフィラエが、ボクたち兄弟が幼いときに怖い思いをしたと語っているのですが(「お昼寝の邪魔をするもの」と題したページ)、打ち明け話しをすると、ちょっとしたエピソードがありました。 近所の子どもたちが孤児になったボクたち兄弟を助けようとしたとき、ボクだけ逃げてしまったんです。 アテナの方は、すぐにパニックになるフィラエと、それから、育ちそこなって小さかった弟(その後すぐに死んでしまったので、ボクは顔を覚えていません)をかばって、その場を動きませんでした。 それで、彼らは今の家に引き取られたのでした。 それで・・・ ボクだけひとり、村の空き家になっていたところに残りました。 普通なら乳離れできない年齢だったので、とても不安でした。ママが姿を消してしまったうえに(フィラエは車にひかれたのだと言っていました)、兄弟もいなくなってしまったのですから・・・。 近所の子どもたちが、まだボクが残っているはずだと探しに来てくれました。それがなかったら、ボクはひとりぼっちで一生を終えることになったかも知れません。 兄弟と再会したときには、「逃げることなんかなかったのに・・・」とアテナに言われてしまいました。でもボクは、子どもたちが怖かったのだもの・・・。 小さなときから、アテナはしっかりしていました。お母さん代わりになろう、と考えたみたいです。 ネズミとりを始めたのもアテナが一番最初でした。始めはネズミに逃げられたりしましたが、全然めげないので上達は早かったです。 彼女が近所でネズミを見つけると、必ず家に連れて帰ります。褒めてもらおうと思っているらしいのですが、人間たちからは嫌な顔をされる。 それでも、へこたれません。 捕まえたネズミとは、長いこと色々なことをして遊びます。 知らん顔して放っておいてから、ギュっと捕まえたり・・・。ネズミを宙に放り投げて、飛び上がってそれをキャッチしたりもします。ボクは、そんなバスケットボールの選手のようなマネはできません。 残酷みたいに思われるでしょうが、そうでもないんだそうです。 ネズミがパニックになると、排泄物を出す。しばらく遊んであげると、ネズミのお腹の中は空っぽになる。だから、ボクたちネコはおいしいネズミが食べられる。そういうことになっているのだそうです。 実をいって、ボクはそんなことは考えないで行動しています。それに、アテナほどには長く遊ばないで食べてしまいます。あれだけ長いことネズミを追い回すアテナの場合は、ネズミのお腹の中は本当にからっぽになっていると思う。アテナは美食家なのかも知れません。 正直なことを言うと、ボクはネズミが可愛そうだと思ってしまうので、あまりハンティングはしません。近くに空き家があるので、ネズミはいくらでもいるのですが。 ともかく、アテナは活発な子です。 ポール・ヴァレリーという作家は言ったそうです。 「女には3種類ある。手を焼く女と、手を焼かせる女と、手を焼きたくなる女だ」 でも、アテナは、そのどれにも当てはまらないように、ボクは思います・・・。 |
ボクは弱虫なの?・・・ いくら元気すぎるアテナでも、ボクをいじめたことは一度もありません。かえって面倒見が良い「アネゴ」という態度でボクに接しています。 でも時々、人間たちがボクたち兄弟を比べられることがあるので困っています。アテナの方が、男の子のボクより勇敢だって・・・。 先日、こんなことがありました。 ボクたちの家にはネコ専用の小さな玄関があって、そのそばでボクたちの食事も出されることになっています。 その日、アテナとボクがそろって食事をしていたら、不穏な空気が玄関の向こうに感じられました。 漂ってくる匂いで、最近やって来るようになった意地悪な野良猫だと分かります。家の人が食べ物なんかあげるので、だんだん厚かましくなってきているのです。こいつはイソウロウのくせに、ボクをひっかいたこともあるのです。 それでボクは、さっと走って、テーブルの下に避難しました。 アテナも食べるのをやめて・・・、それから・・・、玄関に突進して行きました! それを見ていた家の人があったのです。 「アテナは女の子なのに敵に向かっていったのに、男の子のメフィストは逃げた!」と、大笑いしているんです! このときほど性差別を意識したことはありません・・・。 |
「女は女に生まれるのではない」とすると・・・ シモーヌ・ド・ボーヴォワールが、『第二の性』という本の中で、こう言っていたのを思い出します。 「女は女に生まれるのではない。女になるのだ」 ボクも、そういうものかも知れないという気がしました。 「メフィストは男の子のくせに逃げた」なんて言われると、この次は勇敢に立ち上がらなければならない・・・という気になってしまったのです。 でも、誰にだって、生まれながらの性格というものがあると思います。ボクが男の子だからといって、男の子らしくしろ、なんて言って欲しくない・・・。 |
アテナの寝姿をご覧ください (右の写真)。 ほとんど大の字になって寝るんです! アテナが勇敢なのは、もともと大胆な性格があるからなのです。単純に、それだけのことなのです。 ボクは、圧倒されてしまいます・・・。 ボクは気が優しいから、あの日、野良猫に立ち向かって行けなかっただけなのです・・・。 |
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この間は7月14日のお祭りがあって、みんな飲んだり踊ったりしていました。ところがボクは、誰からもダンスに誘ってもらえませんでした。そうアテナに言ったら、笑われてしまいました。 「バカね、あなたって。ダンスは男の子が誘うものなのよ。自分で誘わなかったら、踊ってくれる人がいないのは当たり前じゃない!」」 そんな決まり、いつ、誰が作ったの? すごく不公平なことではないですか?! ボーヴォワールは今から50年以上も前に女性解放の本を書いたのだけれど、男性開放の本は誰も書いていないのだろうか?・・・ こんなアテナも、人間に生まれていたら、もう少し女の子らしく育ったのでしょうか?・・・ 野良猫なんかが来たときには、ボクの背中の後ろに隠れて、「お兄ちゃん、こわ〜い!」なんて甘えた声で言ったりして・・・。 そうなると、ボクも・・・ 「大丈夫だよ、アテナ。ボクが君を守ってあげるからね」 なんてカッコいいことを言って、勇敢に野良猫に立ち向かって行くかも知れない・・・。 でもボクは、そんな演技をするアテナより、今のままの方が好きだな。第一、ボクにしがみついてくるアテナなんて、想像もできません! |
ボーヴォワール著 『第二の性』 を読んでみる |
2005年7月 |
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