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静かなのが好きなわたしです。でも最近は、土曜日になると、車のクラクションに悩まされています。 |
はなばなしくクラクションがなるので何事かと思って外に出ると、バカバカしいような飾りをつけた車が行列を組んで走っています。 どこで拾ったのかと思うような、時代遅れの車もあります。 家の人に聞いたら、結婚式に参加する人たちがバカ騒ぎをしているのだとか。 本当は街中ではクラクションなんか鳴らしてはいけないのだけれど、こういうときは大目に見られるのだそうです。 わたしも我慢しなければならないかな・・・と思っていたのですが、この週末、ちょっと考え込んでしまうことがありました。 こういう自分たちだけ「楽しい!」というバカ騒ぎは、辛かったことを思い出させてしまったりもするのですよね。 |
パリに行くんだ! と言うお姉さん 6月になったばかりのとき、ママのところにお友達が来ました。 「私、この週末はパリに行くの!」と息巻いています。 パリまでは電車で2時間以上かかりますが、そこに行くのは珍しいことではありません。それなのに、すごいことをするみたいに言うなんて、変な人だと思いました。 でも、どうしても行かなければならないんですって。 その理由を聞きました。聞くも涙のラブストーリー・・・。 話しの始まりはここから。 お姉さんには、高校生のときに憧れた人がいました。背が高くて、とってもハンサムな人。 でも彼はかなり年上だったし、モテモテのタイプ。ただのお友達関係だった彼女のことなんか放っておいて結婚してしまいました。 ところがうまくいかなくて、何年かすると離婚。 お姉さんは彼のことが忘れられなくて、ずっと独身でした。 どんなきっかけがあったのかは知りませんが、二人は同棲するようになりました。 ついに初恋の人と一緒になれたのですから、本当に幸せだったそうです。 それに彼は、女性に甘いことを言うのが上手。冗談も連発するので家には笑いがたえない。しかも、お料理もプロなみに上手ときている。理想的なパートナーです! やっと捕まえたのですから、正式に結婚したいと思ったそうです。でも、彼は絶対に結婚したがらない。なにかにつけて結婚のことを持ち出したけれど、説得できません。 一度目の結婚で懲りている人なのだから、もう結婚は嫌なのだろうと諦めるしかありません。 それに今のフランスでは、法的な結婚をするのはどうでも良いことになっていますから、結婚なんかにこだわる方が愚かでもある・・・。 そうして7年がたちました。 いつの頃からか、彼には恋人ができていました。 その人のことを、お姉さんは「ペタス」と呼んでいました。そういう名前の人なのか、「売女」という意味でペタスと呼んでいたのかは分かりません。いづれにしても、発音するのをはばかるようなお上品ではない呼び名です。 この冬、彼は、そのペタスさんと一緒に住むことにした、と宣言して家を出ました。 ペタスさんは、お城ともいえるようなお屋敷を持っているのです。そこに行ってしまいました・・・。 |
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なぜパリに行かなければならないか? 彼が出て行ってしまっただけでも辛かったのに、もっとショッキングな事態になりました。 彼は結婚しない主義だと思っていたのに! しかも家を出てから半年で結婚することになった。 彼は遊び人だから恋人ができるのは覚悟していた。でも、結婚なんかするとは思ってもいなかったそうです。 お姉さんはショックなのを通り越して、カンカンになっていました。「あのペタスが!・・・」という言葉の「ペ!」に力が入っています。 それで、お姉さんは、彼らの結婚式がある週末にパリに行くことにしたのだそうです。 なぜって、近くにいたら、結婚式を妨害しようと押しかけてしまいそうだから。トラクターで披露宴をメチャメチャにしてしまうだろう、と言うのです。 お姉さんのお父さんは農業をしていて、ものすごく大きなトラクターを持っているのです。それで乗りつけたら、披露宴会場に集まっている人たちなんか粉々に踏みつぶせてしまえる。 「私、自分のことが分かるのよ。ここにいたら、絶対にトラクターに乗ってしまうと思う」 大柄なお姉さんだから、大きなトラクターのハンドルを握る姿も容易に想像できました。本当にやってしまうだろうな・・・と思いました。 心配してくれたパリに住んでいる友達が、その週末を一緒に過ごそうと招待してくれたのだそうです。たくさん人を集めるホームパーティをして、大騒ぎして、彼女の気分をそらしてくれることになっているとか。 でも、わたしは、お姉さんがトラクターで勇ましく披露宴会場に現れて欲しいかったな・・・と思ってしまいました。メフィスト編集長はどう思われますか? |
人生って色々なんだな・・・と思ったネコより |