フランスの食文化は守られているか

食事中にテレビを見る

 フランス人の94%は「食事は楽しい」と考え、93%は「家族が顔を合わせる大切な時間だ」、とアンケートに答えています。

 ところが、そんな大事な食事の時間なのに、やはりテレビを見ながら食事をする人の割合は高い。58%は「テレビを見ながら食事をする」と答えています。

 ただし、この割合は、収入が高い世帯(月3,000ユーロ以上)では43%なのに対して、低所得世帯(月1,500ユーロ未満)では62%。これは感じていたことと一致します。

 テレビを見ながら食事をすると言っても、その日のニュースを見ることが目的の場合が多く、食事の間中ずっとテレビをつけっぱなしにしているわけでもないようです。それに、一人で食事をする人が4分の1はいるわけですから、半分以上のフランス人がテレビを見ながら食事をしているとしても、それが一家団欒の妨げになっているとも言えません。

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料理は親子で伝えられていたのに・・・

 日本では料理学校に行くお嬢さんが多いのですが、フランスでは聞いたことがありません。フランス人の71%は、祖父母か両親から料理を習ったと答えています。

 ところが50歳以上の人の45%は、子どもたちに料理を教えていないと答えています。

 では若い人たちは何処で料理を習うのか? 57%は雑誌や本やインターネットなどでレシピ-を見つける、35%はお店の人から教えてもらう、45%は家族のアドバイスでメニューを決めるそうです。

 もっと多いのは、友人のアドバイス(63%)、あるいは医者の指示(58%)。自分のアイディアで料理する(88%)、新しい料理を考案する(78%)。

 いづれにしても、自分らしさのタッチを加えることがお好きのようです。

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ファーストフード

 何かと言っては非難されているマクドナルド。それなのに店舗数は増えています。

 フランス国内にあるアメリカ式ファーストフード店の数は1,347で、うちマクドナルド1,009軒Quik が308軒(2004年)。それでも、この手の店舗は増加の速度を弱めているそうです。

 サンドイッチを食べる人は、ハンバーガーを食べる人の8倍。やはりフランスでは伝統的なサンドイッチが場所を譲っていません。

 ただし「フランス式」ファーストフードが増加しています。このカテゴリーに入るのは1,521軒(Paul 234軒、Brioche Dorée 222軒)。大手スーパーなどにあるカフェテリアも人気を呼んでいます。

 ファーストフードは「革新的」とか「かっこいい」という感じがありました。特に子どもたちが行きたがると嘆く声が聞かれました。でも最近では、行かないと乗り遅れるという感じが薄れてきました。食事時間を短くしたいなら、サンドイッチを買って何処かでかじれば良いわけですから。職場、道端、車の中、公共交通機関の中、公園など、何処でも食べる人が増えてきました。

 ちなみに、フランスにもスローフードの支部はありますが、マスコミが「スローフード」という言葉を使うことはほとんどないと感じます。

 イタリアで生まれたスローフードの理念をみると、フランスには独自に食文化を守ろうとする運動があるので、スローフード運動をしなくても良いからでしょう。それに食道楽のフランスでは、まだ食の乱れの度合いは浅いと感じます。

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外国料理に目覚めた

 フランスで目にするレストランは、日本のようにはバラエティーに富んでいません。パリなどのような飛びぬけた大都会には各国料理のレストランがありますが、地方都市で見かけるのは余り種類がありません。

 ポピュラーなのは、旧植民地諸国の料理、中華料理の店。予算がないときに行く人も多いようです。ただし、前者はボリュームがあるとして知られており、後者はお腹にたまらない料理と見られています。日本人にとっては、中華料理が「軽すぎる」と言われるのには抵抗がありますが!

 県庁所在地レベルだと、最近は日本料理店もあります。パリでは、日本料理店が続々と増えています。でも経営者の8割は中国系だとか。中国料理には気取ったイメージがないので、「日本料理で行こう」と思った中国人が多いのではないでしょうか?

 友人に日本料理を食べさせるときの反応は、10年前とはずいぶん変わりました。ひと昔まえには、「生魚を食べる」とか「海苔を食べる」と言っただけで顔をしかめられたのに、最近では私に日本料理を作って欲しいと言うのです。

 2000年のアンケートでには、「外国料理を時には食べる」と答えた人は半分以下だったのに、2003年には4分の3のフランス人が「ウイ」と答えています。特に、所得が高く、子どもがいる40歳以下の人たちは、外国料理を食べる人が多くなっています。

 ホームパーティでも「エキゾティックな」料理をつくる人が多くなったことは、アンケート調査にも現れています。中華料理、旧植民地諸国の料理、インド料理、日本料理など。私の友人の中にも、見ようみまねで寿司をつくる人たちもいます。でも、フランス人に評判が悪いドイツ料理とかイギリス料理をパーティで出す人はいるでしょうか?・・・

 こんな外国料理ブームはフランスの食文化を乱すと見る人もあるようです。でも、フランス人の味覚が広がるとして肯定的に見ても良いのではないでしょうか? フランス国内でも地方によって外国料理くらい違うものもあります。例えばアルザス料理とプロヴァンス料理。それを「エキゾティック」だと喜んで味わうようになったというのは、フランス料理を豊かにすることにもなるのです。

 それに外国料理を出す食事会でも、メイン料理だけを外国料理にして、その他の料理(前菜、デザートなど)はフランス料理にするというケースが多いのですから、フランス人がフランス料理をないがしろにすることはありえないと思います。

 むしろ食が肥えてきたので、たまには変わったものも食べたくなったのでしょう。実際、おいしい料理を食べなれている高所得の人たちに日本料理は人気を呼んでいるのです。
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作成: 2005年2月
 数字で見るフランス人 目次
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