町の中だけれど、田舎にあるみたいなお家
Ma maison de campagne en ville

   
 ブルゴーニュに住んでいるレグリスです。

 メフィスト編集長に似ていると思われた方があるかも知れませんが、私たちは親戚ではありません。それにメフィストさんは男性ですが、私は女性です!

 おしゃぶりレグリス

 私の名前は、マモンが子どもの頃にしゃぶっていたレグリスにちなんで付けたのだそうです。

 レグリス(réglisse)というのは、右の写真のような甘草(カンゾウ)。子どもたちが飴代わりにしゃぶるもの棒っきれです。

 しゃぶっていても飴のようになくなってしまわないので、マモンが小さかったころには、子どもたちは誰でもしゃぶっていたそうです。今は、レグリスを入れたお菓子が作られています。

 レグリスという植物がどんなのかと思ってネットで調べたら、野生レグリスの写真を見せているサイトがありました。ご興味がある方は、ここをクリックしてご覧ください。

 なぜだか分かりませんが、人間たちは口に何かをしゃぶっていないと物足りないみたいです。

 もう小学校に行くようになった子どもが、赤ちゃんのおしゃぶりをくわえているのも見たこともあります。どこの国でもそうなんでしょうか?・・・

 大人になっても、指をしゃぶる癖がとれない人がいます。いつか家に来た友達が、マモンとそんな話しをしていました。「爪がこんなになっちゃっているのよ!」と言って、二人で変形した爪を見せ合いっこしているの! 子ども時代が過ぎてから30年くらいはたっている人たちなのに。

 なんなんでしょうね?!・・・ 子どもの頃に味わったレグリスが懐かしいからなのでしょうか?・・・

 子どもたちはお菓子だと思ってレグリスをしゃぶっているけれど、これには薬草としての効果もあるのだそうです。

 古代から呼吸器系の病気の治療に使われたとか。中世には希少価値があって高価なものだったそうですが、17世紀からは薬草として栽培されるようになったのだと教えてもらいました。

 それから、レグリスはワインの香りを表現するのにも使われているそうです。

 レグリスのPRはこのくらいにして、私のおうちを紹介します。

 女系家族

 私の家は女系家族です。マモン、2人のマドモワゼル、それから私。

 パパという男性もいたそうですが、私が生まれる前にいなくなってしまいました。

 マモンは働きながら一人で家族を支えているのです。たぶん辛いこともあると思うけれど、悲観的なこととか、愚痴るのは見たことがありません。いつも明るい。だから、お友達もたくさんいます。

 ああ、一つだけマモンが愚痴るのを聞いたことがあります。

 お友達と大勢でワインの買い付け旅行に行ったときのこと。会ったことがない人が数人いたのですが、その中に変な男の人がいたんだそうです。

 農家でワインを買い付けてからレストランに入ったら、その男はマモンの隣に座って、今の奥さん(何度も結婚していた人らしい)とは気が合わない、障害者の子どもまでいる・・・とぼやいて、つまりマモンをくどこうとしたそうです。その「今の奥さん」というのが隣にいたのに!

 「奥さんが隣にいるのに、そんなことを言うなんてシヤン(犬のことですが、酷いという意味)だ!」とマモンは怒っていました。

 携帯電話の番号を書いた紙を渡して、マモンの番号も教えてくれ、とズーズーしいことも言ったんだそうです。「自分に電話をかけることはないから、番号なんか覚えてない」と答えたそうです。

 よっぽどショックだったのかな?・・・ 家に来たお友達に話しているのを何度も聞きました。

 マモンが友達に手伝ってもらって建てたお家

 パパが亡くなったときのマモンは、本当に勇気があるところを見せたそうです。大黒柱がなくなってしまったことだけでもショックだったのに、借りていた家の大家さんが「この家は売ることにしました」と言ってきたのです。

 日当たりが悪い家なのに高い売値! それでマモンは、家を建てて移り住むことにしました。それが今の家です。

 大きな町に近いので土地代だけでも高かったのだけれど、なんとかなりました。でも、予算がないから平屋建て。

 それから、素人でもできることは全部お友達に手伝ってもらって仕上げました。新築祝いのパーティは、手伝ってくれたお友達30人くらいを招待して開きました。

 暖炉もある大きなサロンは、一角にキッチンがあるというアメリカ式。マモンは、お料理しているときでも子どもたちの顔を見たかったのだそうです。その他に、子どもたちの個室、マモンの寝室。それから、お客さんが来たら泊めてあげられるマモンの書斎があります。浴室は1つしかありませんが、トイレは2つ。大きな納屋も棟続きになってあります。別棟でガレージもつくりました。

 3人+1ネコ家族には十分な広さでしょう? マモンが建てた家ですから、私も誇らしいです。

 住めるようになってから1年以上たちますが、まだ工事は続いています。

 今は長女のボーイフレンドに壁を塗ってもらっています。壁紙よりペンキの方が良い、とマモンが判断しました。だいたいは南仏みたいな明るい黄色にしてありますが、子どもたちの希望で、長女の部屋は空色。次女の部屋は薄い空色とピンク色にしています。

 初めは庭が殺風景だったのですが、お爺ちゃんが庭に植木を植えたり、野菜畑を作ってくれたりしたので、どんどんお家らしくなってきました。

 町の家と言っても、のどかな環境

 見た目は新興住宅地に典型的なお家。隣近所にある家々も、なんだか似ています。でも、私の家の周りの環境は素晴らしいのです!

 一番嬉しいのは、家は住宅地の行き止まりにあるので、車がめったに来ないこと! 交通事故の心配をしながら生活するのほど不愉快なことはありませんから。

 それから、庭の北と西側は市民農園になっているので、お隣さんに気を遣う心配がないのも魅力です。

 しかも、庭と市民農園との隔たりには小川が流れています。家に来る人たちは、「町なのに、田舎に住んでいるみたいでいいね〜!」と、口々に羨ましがっています。

カモが泳いでいるのが見えますか?
 自然の中で暮らしていると、ハプニングも起きる!

 まだカモは捕まえたことがまだありませんが、水泳は上手になりました。だって、お散歩するときに道路とお隣の家を避けようとしたら、川を渡らなければ遊びに行けないのですから。

 猫は泳げないはずだ、なんて言う人がいました。

 私は、インターネットで、お風呂でスイスイ泳ぐ日本のネコちゃんを見せてもらったこともあります。

 マモンに私も証拠写真をとってくれるように頼んだのですが、またとってくれていません。カメラを構えて私が飛び込むのを待っている暇なんかないんだって。

 私も気が向かないと飛び込まないからな〜・・・。それにマモンのカメラはオンボロなので、シャッターを押す前に私は向こう岸に着いてしまっているだろうし。

 でも一度は大変なことがあったのです。

 上流にある工場が川に油を捨てたらしい。そんなことは知らないで、いつものように川に飛び込んでしまった私。体がベトベトになってしまいました・・・。

 苦しいの、気持ち悪いのって、極限状態・・・。マモンは私をお医者さんに連れて行ったりして大騒ぎ。ものすごくお金もかかったらしい・・・。

 悪いことをしてしまったと反省しています。でも、一番悪いのは工場ですよね?!

 もう一つの我が家の非常事態は、小川に住んでいるカモたちがしでかしました。

 引っ越して間もなかった夏の初めのこと。

 私がよそに遊びに行っていた間に起こった出来事です。もし私がいたら、私の家族がパニックになることは起こらなかったと思う・・・。

 家族そろって庭で食事をしていたら、カモたちが庭に入って来たのだそうです。

「わあ、のどかでいいわね〜。これを牧歌的(boucolique)と言うのよ!」なんて、 マモンも、子どもたちも、大喜びしながら食事を続けました。前に住んでいた家はすぐ近くにあったのですが、こんな長閑な風景はなかったからです。

 ところが突然、一羽のカモがウンチを始めてしまったのです! コロンとしたのとは違って、カモのウンチは液体状なのだ!・・・と気がついたそうです。

 「ひや〜! どうしよう?!・・・」、とアタフタ。

 すると、こともあろうに・・・ そばにいたカモがやって来て・・・ そのウンチを食べ始めた!

 牧歌的だなんて喜んでいたのもふっとんで、すっかり食欲が減退したそうです。町の人って、そんなものなのでしょうね。

 このときから、マモンは食事のときにカモが来ると追い払うことにしました。

次のページでは、うちで開かれた夕食会のご報告をします 


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