田舎町のパン屋だった...
ソクラテス
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 今回報告するネコたちの中で、一番多くの人に影響を与える出来事を起こしたのは、ソクラテス君でした。


ソクラテスがいなくなった町では大騒ぎ!
 大事件がおきました。この夏、ソクラテスが突然いなくなったのです!
 ・・・こう書くと、家出したのかと心配されてしまうかも知れませんので訂正します。

 ソクラテス一家は引っ越してしまいました!

 ソクラテスの店のパンは特別においしかったので、お客さんたちはすごいショックを受けました。夏のヴァカンス・シーズンだったので、長い旅行から帰って来てから知らされて、卒倒するくらい仰天した人もいたとか。

 その町にソクラテス一家がパン屋を開いたのは、せいぜい5年くらい前でした。新しいパン屋がおいしいパンをつくることに感激した人たちが多かったのですから、いなくなったと聞けばショックを受けてしまいます。

どことなく違うパン・・・
 こういうお店を売るときには、お店の建物だけではなく、製造につかう機械とか、売っていたパンの作り方なんかも一緒に売るらしいのです。従業員も残るのでしょうね。

 だから新しいパン屋さんでも、同じ名前のパンが売られています。でも、形も味も、いままでのパンに似ているけど、何かが違っていて、ひと言で言えば「今までのようには美味しくない」というパンなのです。

 ソクラテスについて報告をしてくれた人は、3週間ぶりくらいにパン屋に行ったら、見たことのない女性がパンを売っているので、アルバイトの人だと思ったのだそうです。

 それが新しいパン屋の奥さんだと聞いて、失礼にもがっかりした声をあげてしまったそうです。でも並んでいるパンが、似ているけど違う、というのがなぜだったのか理解できました。

 「余り遠くないところで開業したなら買いに行けたのに・・・」、「せめて最後の別れをしながら、あのパンを食べたかった・・・」と、さんざん嘆きました。

 それから2〜3週間は、食事するたびに「もう、あのパンは食べられない・・・」と涙が出るほど悲しかったそうです。その後もう何ヵ月にもなりますが、代わりになるようなおいしいパンを探し続けているとか。

 やっとパリに近い町で、ソクラテスのパンとは違うながらも、とてもおいしいパンを見つけたそうです。でも、まさかそこまで買いに行くわけにもいかないと言っていました。

 そんなにおいしいパンを見つけるのに苦労するものなら、ボクはパン食でなくて良かったと思いました。

「ソクラット」というパン屋が世界を制覇するかも・・・
 ソクラテスたちは、スイスに近い、もっと大きな町に移ったらしいのです。まだ若い一家だったので、商売の拡大を考えたに違いありません。

 フランスには、小さな普通のパン屋からスタートして、フランス中、いや世界中に知られるパンのメーカーになった人が何人もいます。お店の建物がおいしそうなポールとかいうパンのブランドは、日本にも進出しているとか聞きました。

 ソクラテスのパパも、そんな企業家になるかも知れません。商標は、やはり「ソクラット」になるでしょうね。ソクラテスのフランス語読みです。

 みなさんも、「ソクラット」というパンが売られるようになったら買って味わってみてくださいね。

 でもボクの好みでは、ソクラテスたちには、工場生産のパンなんかをつくって欲しくはないけれど・・・。

新しいパン屋にもネコはいる
 ところでソクラテスのお店を買った新しいパン屋さんにもネコがいます。

 ネスクイックとかいう名前なんだそうです。有名なお菓子の名前とか。食べたことはありませんが、スーパーなんかで売っているチョコレートかな?

 ボクに報告してくれた人は、そのネコはとても可愛いので、「そんな名前じゃかわいそう・・・」と思ったそうです。それで新しいパン屋さんの奥さんに、「前にいたパン屋さんのネコはソクラテスっていう名前でしたよ」なんて笑いながら、つい言ってしまったんだそうです。

 「知ってます!」と、奥さんは怒った顔で答えたそうです。

 お客さんたちから「パンがまずくなった」とさんざん言われて頭にきているはずの奥さんは、ネコのことまでけなされたと思ったのでしょうね。

 たぶんネスクイックも苦労していると思います・・・。いつか写真をもらったら入れます。
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