3月: ブドウの剪定作業
Taille tôt ou taille tard, rien ne vaut la taille de mars.

「早すぎる剪定、遅すぎる剪定、3月の剪定に勝るものはない」という諺があります。

3月。暦の上では春とは言え、ブルゴーニュでは冬と言った方が良いような寒さ...。

しかし、ブドウの葉が伸びてくる前に余計な枝を剪定するのは大切な仕事。この時期、ブドウ畑のあちこちで剪定作業を見かけます。

剪定作業: 前年に伸びた枝を、惜しげもなく切っていきます。切った枝を燃しながら畑を進む作業

剪定が済んだブドウの木を見るのは、とても興味深いです。葉が伸びてくる5月頃まで、ブドウの木がどんな形に剪定しているのかが良く分かるからです。


 色々な剪定方方法がある

ブドウの枝の剪定の仕方は、地域、生産者によって違うのですが、ブルゴーニュで最もよく見かけるのは、下の写真の形。と言うか、剪定された枝をしげしげと見ないと、ブドウの木はすべてこの剪定の仕方をするだろうと思うほど圧倒的に見られる形です。




guyot simple(ギヨット・サンプル)
と呼ばれる剪定方法

葉を出す枝を1本残しています。

写真が見えにくいかも知れないので、ワイン農家の人が描いてくれた絵を入れてみます。こんな風に枝葉が伸びるのだ、と説明してくれたときのものです。

春先に余分な枝を切り落としてしまうのは、ブドウの実がたくさんなり過ぎてしまうのを避けるのです。AOC(原産地統合呼称)が付いた品質の高いワインを生産するためには、生産制限もあります。

実が少なければ、それだけ濃厚な液を蓄えたブドウがなるわけですから!

この絵を描いてくれたワイン農家のお話しは、こちら

そのバリエーションのような剪定もあります。

残された枝が2本あります
(オート・コート・ド・ニュイの産地)
 
枝が逆U文字形で下におりています
(ブルゴーニュ南部マコネの産地)

横に伸びた枝を残した上の写真は、ブルゴーニュの中でも特に高級なワインができるブドウ畑でした。

こちらは、もう少し安いワインができる産地です。残す枝を長くしてブドウの房を多く作ろうとしているのかも知れません。

さらに、下の写真のように、縦に枝を伸ばしているブドウの木もあります。バヨネットと呼ばれる銃剣を連想させます。

baionnette (バヨネット


 ブドウを最大限に濃厚にする剪定方法もある!

横に伸びるギヨット型、縦に伸びるバヨネット型にしても、逆U字型でない限り、葉を付けるために残された枝の長さは同じくらいに見えます。

ところがブルゴーニュのコート・ドール県にあるジュヴレ・シャンベルタン村で、ブドウの房をつけるのを極端に抑えた剪定をしているのを見つけて驚いたことがあります。


バヨネット型だと思います。ひとつ上に入れた写真と比べて、残された枝の長さが3分の1にも満たないのが見えるでしょうか? ここまで短くしてしまったら、ブドウの房はいくつも付かないはず!

畑で作業をしていた人に聞いてみると、ここではブドウの木1本に3つくらいの房しかつかないようにしているのでした。

このあたりはブルゴーニュの中でも高級ワインが生産される地域です。この後に立ち寄った農家もブドウの房を少なくおさえていたのですが、1株から8房つくっていました。普通なら、その倍は実をならせると思います。

ブドウの房3つを絞った液は大した量にはなりません。それを醸造して、瓶詰めする前にセラーで寝かせている間にも蒸発します。こだわりのワインを作っているところでは、昔ながらのオーク材の樽、しかも使われたことのない新しい樽にも一定期間寝かせているはずです。これは非常に液を消費します。商品となるボトルの中にどのくらい残ることができるのでしょうか?・・・

ところで、上に入れた写真をご覧になって、枝を支えるための針金にご注目くださいましたか?

普通より1本多くて、かなり高い位置まで針金がありました。普通は伸びてきたツルを剪定していくのですが、ここではツルは切らずにおくとのこと。

ブドウの房は少なく、葉の方は多くすることによって、ブドウに養分が濃厚になるということのようです。分かりやすい場所にあるので、葉が茂った頃に見に行きたいと思いました。

超高級ランクのワインができるブドウ畑では、質を高めているために努力をしているのは普通のことでもあります。ところが、この極端に枝を短くしたブドウ畑でつくられるのが、村の名前だけついた「ジュヴレ・シャンベルタン」だと聞いて驚きました!

「ジュヴレ・シャンベルタン」というワインの銘柄には「特級ランク(グラン・クリュ)」、「一級ランク(プルミエ・クリュ)」があるのですが、その下のランク、つまり村の名前しか付いていないランクなのです。

あのロマネ・コンティでさえ、こんなにブドウの房を少なくはしていないのではないでしょうか? 畑を見た限りでは、これよりは長い枝を残していました。
内部リンク: ロマネ・コンティのブドウ畑

ここは土壌の質からいって、そんなに超高級なワインが作れる畑でもない。それでも作り方によって、最下位にランクされる「ジュブレ・シャンベルタン」とは思えないようなワインができるのだろうと思います。

この畑を所有しているのは質の高い高級ワインを多く扱っていることで名高い大手のドメーヌ・ルロワ。さすがワインファンが多い日本でも販売されていました。
ドメーヌ・ルロワのワインを検索



ブルゴーニュ地方のワイン地図


 ブドウの木を見ると、ワインの味が思い浮かぶ...

ブルゴーニュ地方で見たブドウの木の写真ばかり入れてしまいましたが、別の地方に行くと、もっと色々な剪定の仕方があると思います。

右に入れた写真は、パリ市内にあるブドウ畑。モンマルトルの丘にあります。昔はパリでもワインが生産されていたことの名残りとして、愛好会の人たちが保存しているようです。

特別な行事がある時でないと畑の中には入れませんが、道路から見ることはできます。

それにしても、葉がないときのブドウの木を見ると、それからできるワインの味も見えてくる気持ちになりませんか?

作成: 2006年4月



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