フランスの
母の日は
いつ、どのようにして
できたのか?


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目次

 アメリカで「母の日」がどのように生まれたかをご紹介してきたのですが、フランスではかなり様子が違っています。

 フランスでは、子だくさんの母親を賛美することから始まった
 しかしフランスでも、1806年の春、ナポレオン(1769―1821年)が母親を祝す祭日を作っています。

 何しろ戦争好きの彼は、それまで豊かな人口を誇っていたフランスを一挙に人口危機に陥らせた人なのです! 多産を奨励することによって人口を増やそうというもくろみから起こった発想だった、と私は思います。

 19世紀末から20世紀初頭にかけて、ナポレオンのアイディアが発展します。しかし、母親を讃えるというよりは、命を生み出す役割を讃えるものでした。当時のフランスは戦争による人口危機に落ち込んでいたのです。

 1897年、人口減少への対策として、子だくさん家族を祝う「子どもの祭日(Fête des enfants)」というアイディアが打ち出されました。多産と家族を賞賛するのが目的です。

 1906年、イセール県において、母親を祝ってパレードなどをする、お祭り気分いっぱいのイベントが行われます。子どもをたくさん生んだ母親を表彰するなど(13人出産で金賞)、今日のフランスの母の日の原型をつくりました。

 1917年には、パリに住む多くの家庭が「大家族の祭り(Fête des familles nombreuses)」が行われました。翌1918年にはリヨン市にも広がり、「母の日(Journée des mères)」の祝いとなります。そして全国的に広まっていきます。

 戦争中に、フランスの兵隊たちが大量に手紙が送られるのは母の日の時期だったと知ったために、フランスでも同じようなことをする人たちが現れたのだとも言われています。

 フランスは第1次世界大戦(1914―18年)のときに大量の死者を出しました。子どもを持つ家庭にはたくさんの家族手当が支給されるという、生めよ増やせよの政策がとられています。

 しかし母の日に関しては行政は遅れをとります。

 1919年には、マリア様の被昇天の祭日である8月15日を母の日にしようと考えられました。

 翌年、ようやく政府は母の日を正式に認めます。と言っても、多子家族の母親の日です。このとき、多子家族を「優等家族(les familles les plus méritantes )」に与える報奨金を民間から集めることも始まりました。

 しかし、実際に母の日が公式行事として行われたのは1926年4月20日です。

 フランスに「母の日」ができたのは1941年
 1941年、ペタン将軍は「母の日(journée nationale des mères)」を公式に認めます。

 このとき初めて、子どもの数によらず、すべての母親が祝福されるようになりました。

 1950年2月24日、母の日は公式に祝日となります。

 そして、母の日は5月最後の日曜日と定められました。キリスト教の祭日とぶつかってしまったときの例外も、このときに決められています。

 母の日には多産の母親に勲章を与える
 世界で最も早く高齢化社会となってしまったフランスでは、少子化対策が昔から行われていました。

 多産奨励政策は今でこそいくらか薄れましたが、相変わらず子育て支援は日本とは比べ物にならないくらい充実しています。

 それでも、子どもをたくさん生んだ母親を表彰することが今でも「フランス家族勲章(La médaille de la Famille Française)」として残っているなんて、少し呆れてしまいます。

 毎年、母の日には、市町村長、県議会議長が、多子家族に勲章を与えます。下の写真は2006年に調べたときにあった勲章です。

金メダル

8人以上で獲得
銀メダル

6〜7人で獲得
銅メダル

4〜5人獲得


写真は、友人の家の壁にかけてあった古い表彰状。
お母さんが銀メダルをとったときのものでした!

 昔の勲章の方が立派に見えました。こちらが初代の勲章。今は形式的に残ってしまっているからだけでしょうね。


 こういう公式行事は別にして、母の日にプレゼントをするというのはフランスでも行われます。日本のようにカーネーションに埋まってしまうような商売は見かけませんが。

 10歳以下の子どもがいれば、学校の工作の時間などに作ったプレゼントをもらえるのは確実ではしょうか?

 勲章が存在するからでしょう。プレゼントには、「ママ、いつまでも愛してる」などと書かれているペンダントなども売られていました(右のもの)。

 こういうのをプレゼントする日本人は、いたとしても例外的でしょうね。カーネーションより可愛らしいプレゼントだと思いました。

 でもフランスのママは、こんなものを照れもしないで首に下げておくのでしょうか?・・・

 そして、父の日もできた
 母の日の制定から2年遅れて、フランスでは父の日も定められます。

 父の日も、母の日と同じようにアメリカからやってきました。

 フランスでも父の日は、アメリカと同じく6月の第3日曜日となっています。



出版した報告書: 『フランスの出生動向と家族政策




記事の始まりに戻る 作成: 2006年5月


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